会社(事業主)に防止措置の義務があるハラスメントは6種類あります。この記事では、人事・労務の担当者向けに、6つの条文、指針(厚生労働大臣が定める、事業主が講ずべき措置の内容)に共通する措置、ハラスメントごとの違いを整理します。2026年10月1日に条番号が変わったものがあるので、現行の番号で示します。
義務がある6つのハラスメントと現行の条文
厚生労働省のパンフレット「事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット」(令和8年7月更新)は、事業主の対策が義務となっているハラスメントとして、次の6つを挙げています。
- パワハラ:労働施策総合推進法第31条(2026年9月30日までは第30条の2)
- カスハラ(顧客等の言動で、社会通念上許容される範囲を超えたもの):労働施策総合推進法第33条(2026年10月1日から)
- セクハラ:男女雇用機会均等法第11条
- 求職者等に対するセクハラ(求職者その他これに類する者として厚生労働省令で定める人への性的な言動):男女雇用機会均等法第13条(2026年10月1日から)
- 妊娠・出産等に関するハラスメント(いわゆるマタハラ):男女雇用機会均等法第15条(2026年9月30日までは第11条の3)
- 育児・介護休業等に関するハラスメント:育児・介護休業法第25条
パワハラの規定は番号が第31条に変わりましたが、第1項の措置義務の文言は以前と同じです。
不利益な取扱いの禁止は、条文ごとに範囲が違う
6つの条文のうち、パワハラ、カスハラ、セクハラ、妊娠・出産等に関するハラスメント、育児・介護休業等に関するハラスメントの5つは、第2項で、次のことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いを禁じています。
- 労働者が相談を行ったこと
- 事業主が相談に対応する際に、協力して事実を述べたこと
求職者等に対するセクハラの均等法第13条第2項が守るのは、事業主が求職者等からの相談に対応する際に、協力して事実を述べた労働者だけです。
共通する4つの措置
パワハラ指針とセクハラ指針は、事業主が講ずべき措置として、次の4つを示しています。
- 方針の明確化と周知・啓発:ハラスメントの内容と、行ってはならない旨の方針を明確にし、管理監督者を含む労働者に周知・啓発する
- 相談体制の整備:相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する
- 事後の迅速かつ適切な対応:事実関係を迅速かつ正確に確認する
- 併せて講ずべき措置:相談者・行為者などのプライバシーを保護し、相談したことなどを理由に不利益な取扱いをされない旨を周知する
セクハラ指針には、さらに具体的な内容があります。相談窓口を定めたと認められる例として、指針は、担当者を決める、相談に対応する制度を設ける、外部の機関に委託する、を挙げています。窓口の担当者は、発生のおそれがある場合や、該当するか微妙な場合でも、広く相談に応じるよう求められています。事実が確認できたときは、被害者への配慮、行為者への措置、再発防止の措置を行います。確認できなかった場合も、再発防止に向けた同様の措置を講ずると、指針は定めています。
ハラスメントごとの違い
措置の柱は共通していますが、指針ごとに加わる内容があります。
- 妊娠・出産等に関するハラスメント、育児・介護休業等に関するハラスメント:上の措置に加えて、原因や背景となる要因を解消するための措置が必要です。指針は、業務体制の整備など、実情に応じた措置としています
- カスハラ、求職者等に対するセクハラ:カスハラには抑止のための措置が、求職者等に対するセクハラには求職活動等に関するルールの明確化が加わります。2つの詳しい内容は、当メディアの記事「カスタマーハラスメント対策が会社の義務に:2026年10月1日施行、事業主が講ずべき措置とは」で扱いました
担当者の確認ポイント
自社の就業規則や相談窓口の案内が、上の措置に対応しているかを、指針とあわせて確かめておくと安心です。社内の資料に旧番号(第30条の2、第11条の3)が残っていれば、現行の番号に直しておきます。指針の全文は、厚生労働省のページから読めます。

