賞与を支払うと、会社には社会保険料、雇用保険料、源泉所得税の処理と、年金事務所などへの届出が発生します。この記事では、人事・労務の担当者向けに、特に期限が短い「被保険者賞与支払届」を中心に、賞与で何をするかを整理します。
賞与支払届は「支払った日から5日以内」
賞与を支給したときは、健康保険・厚生年金保険の「被保険者賞与支払届」を出します。期限は賞与を支払った日から5日以内です(健康保険法施行規則第27条第1項、厚生年金保険法施行規則第19条の5第1項)。船員の被保険者は10日以内で、別扱いです。
対象になる「賞与」は、名称を問わず、労働の対償として受けるもののうち、3か月を超える期間ごとに受けるものです(健康保険法第3条第6項、厚生年金保険法第3条第1項第4号)。日本年金機構は、年3回以下の支給のものを賞与支払届の対象とし、年4回以上のものは標準報酬月額の対象としています。
日本年金機構の案内では、提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所で、方法は電子申請、電子媒体、郵送、窓口持参です。健康保険組合に加入している場合は、届出の詳細を加入先の組合に確認するよう案内されています。
ほかにも、日本年金機構は次の点に注意するよう案内しています。
- 同じ月に2回以上賞与を支払ったときは、最後の支払後に、その月の賞与額を合算して届け出る
- 賞与支払予定月に賞与がなかったときは、賞与支払届の代わりに「賞与不支給報告書」を出す
社会保険料:計算・上限・納付
賞与にかかる保険料は、賞与の総支給額から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に、保険料率をかけて計算します。保険料は事業主と被保険者が折半で負担します(日本年金機構)。
標準賞与額には上限があり、仕組みが健康保険と厚生年金保険で違います。
- 健康保険:年度(4月1日から翌年3月31日まで)の累計で573万円(健康保険法第45条)
- 厚生年金保険:1か月あたり150万円(厚生年金保険法第24条の4)。同じ月に2回以上支給されるときは合算した額に上限が適用されます
子ども・子育て支援金(医療保険の保険料とあわせて徴収されます)も、賞与にかかります。こども家庭庁によると、令和8年度の支援金率は0.23%で、令和8年4月保険料から拠出が始まり、「賞与からも支援金を拠出」します(標準賞与×支援金率)。基本的に支援金額の半分は事業主が負担します。
賞与にかかる保険料は、毎月の保険料と合算されて、賞与支払月の翌月の納入告知書で通知されます。納入は月末までです(日本年金機構)。被保険者負担分は、賞与の支払時に賞与から控除できます。控除したときは、控除額を被保険者に通知します(健康保険法第167条)。
雇用保険料は賞与も「賃金」に含まれる
労働保険徴収法では、賞与も「賃金」に含まれ、保険料は賃金総額に料率をかけて計算します(第2条第2項、第11条)。厚生労働省「令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内」によると、労働者負担は、一般の事業(農林水産・清酒製造・建設の事業を除く)で1,000分の5です。
厚生労働省の計算例では、賞与45万円に対する労働者負担は2,250円です。
賞与の源泉徴収
賞与から引く所得税は、原則として次の手順で求めます(国税庁タックスアンサー No.2523、所得税法第186条)。
- 前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額を求める
- 「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」で、扶養親族等の数に応じた率を探す
- 賞与から社会保険料等を差し引いた金額に、その率をかける
「給与所得者の扶養控除等申告書」を出していない人は乙欄を使います。賞与が前月の給与(社会保険料等控除後)の10倍を超える場合や、前月に給与の支払いがない場合は、月額表を使う別の計算になります。
国税庁のページは令和8年4月1日現在の法令等にもとづき、具体例は令和8年分です。令和9年分以後の算出率の表や月額表は改正されているため、賞与を支払う年分の表を確かめてから計算しましょう。
賞与を支払う月の前に、支払日、保険料の負担額、届出の期限をカレンダーに入れておくと、慌てずに済みます。

