労働時間の記録については、会社に求められることが二つの制度に分かれています。この記事では、人事・労務の担当者向けに、健康確保のための「労働時間の状況の把握」と、厚生労働省ガイドラインにもとづく始業・終業時刻の記録、記録の保存期間を整理します。
二つの制度は目的が違う
一つ目は、労働安全衛生法(安衛法)が定める「労働時間の状況の把握」です。安衛法は、医師による面接指導を行うために、事業者が労働者の労働時間の状況を把握しなければならないと定めています(第66条の8の3)。
二つ目は、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)です。労働基準法の労働時間の規定が適用される事業場で、使用者が始業・終業時刻を確認し、記録することを求めています。
対象者も違います。安衛法は高度プロフェッショナル制度の対象者を除く全ての労働者です。厚生労働省の解説によると、裁量労働制の適用者や管理監督者も含まれます。ガイドラインは、労働基準法第41条に定める者(管理監督者など)とみなし労働時間制の適用者を除く全ての者が対象です。ただし、ガイドラインも、対象外の人について適正な労働時間管理を行う責務があるとしています。
把握と記録の方法:客観的な記録が原則
労働安全衛生規則(安衛則)第52条の7の3は、把握の方法を「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法」としています。ガイドラインも、使用者が自ら現認するか、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録などの客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録するのが原則です。
自己申告は、やむを得ず客観的な方法で把握しにくい場合の方法です。厚生労働省の解説は、タイムカードやパソコンの使用時間の記録などのデータがあるのに、自己申告だけで把握することは認められないとしています。直行直帰というだけの理由で自己申告にすることも、認められません。
自己申告で行うときは、次の点に気をつけます。
- 対象の労働者と、労働時間を管理する人に、申告のしかたを十分に説明する
- 申告した時間が実際と合っているか、必要に応じて実態調査をし、補正する
- 入退場記録などのデータと申告に著しい乖離があるときは、実態調査をする
- 時間外労働の申告に上限を設け、超える申告を認めないといった、適正な申告を妨げる措置をしない
厚生労働省の解説は、自己申告で把握する場合、その日の労働時間の状況は、翌労働日までに申告させるのが適当としています。
面接指導の対象と、賃金台帳での代用
安衛則第52条の2は、面接指導の対象(一般の労働者の場合)を、1週間40時間を超えて働いた時間が1か月で80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる人としています。
なお、賃金台帳に記入した労働時間数で、労働時間の状況の把握に代えることができます。ただし、管理監督者、事業場外みなし労働時間制の適用者、裁量労働制の適用者は、この代用はできません(厚生労働省の解説)。この人たちも把握の対象なので、賃金台帳以外の方法で把握します。
記録の保存期間
安衛則第52条の7の3第2項は、労働時間の状況の記録を作成し、3年間保存するよう求めています。
労働基準法の賃金台帳や出勤簿、タイムカードなどは、第109条で保存が定められています。本則は5年間ですが、附則第143条により、当分の間は3年間です。厚生労働省のリーフレットは、2020年4月1日以降に支払われる賃金について、旧法の3年が「5年(当分の間は3年)」になったと説明しています。ガイドライン(2017年策定)の「3年間保存」は、この改正前の記述です。いまの保存期間は、労働時間の状況の記録も賃金台帳なども、3年です。
保存期間の起算日は、賃金台帳なら最後の記入をした日です。賃金の支払期日のほうが遅いときは、支払期日になります(労働基準法施行規則第56条)。
賃金台帳には、労働日数、労働時間数、時間外・休日・深夜の労働時間数などを記入します(第108条、施行規則第54条)。第108条に違反した使用者は、第120条第1号により30万円以下の罰金に処されます。ガイドラインは、賃金台帳にこれらを記入しない場合や、故意に虚偽の労働時間数を記入した場合は、第120条にもとづき罰金に処されるとしています。
自社の勤怠の仕組みが客観的な記録になっているか。対象者ごとの扱いと保存期間が決まっているか。この2点を確認しておくとよいでしょう。

