常時10人以上の労働者を使用する使用者には、就業規則を作成して届け出る義務があります(労働基準法第89条)。この記事では、人事・労務の担当者向けに、作る義務、意見聴取、減給の制限、周知、労働契約法との関係、罰則を、条文と厚生労働省の解説で整理します。
作成・届出と意見聴取(第89条・第90条)
第89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に、就業規則を作成し、行政官庁(所轄の労働基準監督署長)に届け出ることを求めています。記載事項を変更したときも同様です。
厚生労働省『モデル就業規則』(令和7年12月版)の解説では、記載事項には、必ず書く事項(絶対的必要記載事項)と、その定めをする場合に書く事項(相対的必要記載事項)があるとされています。第89条の第1号〜第3号は、次の事項です。
- 始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇など
- 賃金の決定・計算・支払の方法、締切り・支払の時期、昇給
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
「常時10人以上」を数える単位について、同じ解説は、企業単位ではなく事業場単位だと述べています。営業所や店舗が複数ある会社では、企業全体の人数を合計せず、それぞれを1つの事業場として数えます。
届出先は所轄の労働基準監督署長で、10人以上になったときは遅滞なく届け出ます(労働基準法施行規則第49条第1項)。
使用者は、就業規則の作成・変更について、次のいずれかの意見を聴かなければなりません(第90条第1項)。
- 労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は、その労働組合
- ない場合は、労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)
届出には、この意見を記した書面を添付します(第90条第2項)。書面には、労働者を代表する者の氏名を記載します(施行規則第49条第2項)。
過半数代表者は、次のどちらにも当てはまる人でなければなりません(施行規則第6条の2第1項)。
- 管理監督の地位にある者でないこと
- 投票や挙手などの手続きで選ばれ、使用者の意向で選ばれたのではないこと
代表者であることや正当な行為をしたことを理由に不利益な取扱いをしてはなりません(同条第3項)。
減給の制限(第91条)
就業規則で、懲戒処分としての減給(制裁)を定める場合、減給は次の範囲に収めます。
- 1回の額が、平均賃金の1日分の半額を超えない
- 総額が、一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えない
厚生労働省の解説によると、遅刻・早退をした時間分の賃金をカットするのは、その時間は賃金が生じないため、第91条の制限を受けません。ただし、その時間に対する賃金額を超える減給は制裁とみなされ、制限の対象になります。
周知の義務(第106条)
就業規則は、労働者に周知させなければなりません(第106条第1項)。方法は、施行規則第52条の2が次の3つを定めています。
- 各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付ける
- 書面を労働者に交付する
- 電子ファイルに記録し、各作業場に労働者がいつでも内容を確認できる機器を設置する
厚生労働省の解説では、就業規則は作成や意見聴取だけでは効力が発生せず、効力が生じるのは労働者に周知された時期以降と解されています。
労働契約法との関係
労働契約法第7条は、使用者が合理的な労働条件を定めた就業規則を労働者に周知させていた場合、労働契約の内容はその就業規則によるとしています(合意した別の条件がある部分を除く)。
変更については、第9条が、使用者は労働者と合意することなく不利益に変更できないと原則を定めています。例外として第10条は、変更後の就業規則を周知させ、かつ変更が合理的であるときは、変更後の就業規則によると定めています。合理性は、不利益の程度、変更の必要性、変更後の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況などに照らして判断されます。
また第12条により、就業規則の基準に達しない労働契約の部分は無効となり、就業規則の基準によります。
罰則と、担当者の確認ポイント
第89条、第90条第1項、第91条、第106条の違反は、第120条第1号により30万円以下の罰金の対象です。
自社の事業場が常時10人以上か、届出と周知が済んでいるかを、一度確かめておくと安心です。

