
年次有給休暇の「年5日」:会社が時季を指定する義務と、年次有給休暇管理簿
年次有給休暇(年休)のうち「年5日」は、会社が時季を定めてでも取らせなければならない義務です。この記事では、そのしくみと、あわせて作る年次有給休暇管理簿、違反したときの罰則を、条文の順に整理します。
年休の基本(労働基準法第39条第1項・第2項)
第1項は、雇入れの日から6箇月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に、10労働日の有給休暇を与えなければならないと定めています。
第2項は、1年6箇月以上継続勤務した労働者への加算です。6箇月経過日から数えた継続勤務年数に応じて、第1項の日数に次の日数を加えます。
- 1年:1労働日
- 2年:2労働日
- 3年:4労働日
- 4年:6労働日
- 5年:8労働日
- 6年以上:10労働日
ただし、直前の1年間の出勤日数が全労働日の8割未満の人には、その後の1年間は年休を与えなくてよいとされています。
なお、第5項は、年休を労働者の請求する時季に与えるのが原則とし、事業の正常な運営を妨げる場合に限って他の時季に与えられるとしています。
年5日の時季指定義務(第7項・第8項)
第7項は、与えるべき年休が10労働日以上の労働者について、そのうち5日を、基準日から1年以内に、労働者ごとに時季を定めて与えなければならないと定めています。基準日とは、継続勤務した期間を6箇月経過日から1年ごとに区切った各期間の初日です。
厚生労働省の働き方改革特設サイトによると、施行は大企業・中小企業とも2019年4月です。対象は年休が10日以上付与されるすべての労働者で、管理監督者も含まれます。
時季を定めるときは、労働基準法施行規則第24条の6により、次の2点が求められます。
- あらかじめ、年休を与えることを労働者に明らかにした上で、時季について労働者の意見を聴く
- 聴いた意見を尊重するよう努める
第8項は、すでに年休を与えた分を数えるルールです。第5項(労働者の請求)または第6項(労使協定による計画的付与)で年休を与えた場合、その日数分(5日が上限)は、会社が時季を定めて与えなくてよいとされています。本人が請求して取った分や計画年休の分は、5日から引ける、ということです。一方、時間単位年休(労使協定により、年5日の範囲内で時間単位で取れる年休)で取った分は、5日から差し引けないと、厚生労働省のリーフレットは説明しています。
年次有給休暇管理簿と罰則(施行規則第24条の7、附則第71条、法第120条第一号)
使用者は、年休を与えたときは、時季・日数・基準日を労働者ごとに明らかにした書類を作ります。これが年次有給休暇管理簿です。施行規則第24条の7は、与えた期間中と、期間の満了後5年間の保存を求めています。
ただし附則第71条により、当分の間は「五年間」を「三年間」と読み替えます。厚生労働省の資料も、保存は3年間としています。本則の5年と、当分の間の3年があるので、社内規程の保存期間を確かめておくとよいでしょう。
管理簿は、労働者名簿や賃金台帳とあわせて作ることができます(施行規則第55条の2)。厚生労働省の解説は、必要なときにいつでも出力できる仕組みにした上で、システムで管理してもよいとしています。
罰則も確認します。第39条第7項に違反した者は、労働基準法第120条第一号により、30万円以下の罰金に処せられます。
第39条のほかの違反(第7項を除く)は、第119条第一号の対象で、6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金です。第7項の違反だけが、別の条(第120条)で罰せられます。
厚生労働省の解説は、罰則は対象となる労働者1人につき1罪として扱われるとしています。一方で、監督指導では原則として是正に向けて丁寧に指導するとしています。
10月は「年次有給休暇取得促進期間」
厚生労働省は、毎年10月を「年次有給休暇取得促進期間」として集中的に広報しています(令和8年9月30日の報道発表)。
同省『令和7年 就労条件総合調査』(2025年12月19日公表)によると、令和6年の労働者1人平均の年休取得率は66.9%、取得日数は12.1日でした。「過労死等の防止のための対策に関する大綱」は、令和10年までに取得率70%を政府の目標にしています。
報道発表は、取り組みの例として、年休の計画的付与制度と、時間単位年休をあげています。
厚生労働省の解説は、年5日はあくまで最低限の基準だとしています。
