社員が退職したとき、会社(事業主)が行う手続きを、期限ごとに整理します。雇用保険は10日以内、健康保険・厚生年金保険は5日以内など、書類ごとに期限が違います。初めて担当する人向けに、条文と公的機関の案内にもとづいてまとめました。
期限の早見
- 雇用保険の資格喪失届(離職票の交付が要る場合は離職証明書つき):被保険者でなくなった日の翌日から起算して10日以内
- 健康保険の資格喪失届:事実があった日から5日以内
- 厚生年金保険の資格喪失届:事実があった日から5日以内
- 退職証明書:労働者から請求があったら遅滞なく(日数の定めはありません)
- 源泉徴収票:年の中途で退職した人は、退職の日以後1か月以内(本人への交付。税務署への提出は範囲あり)
雇用保険:資格喪失届と離職証明書
事業主は、被保険者でなくなった事実のあった日の翌日から起算して10日以内に、資格喪失届を事業所の所在地を管轄するハローワークへ提出します(雇用保険法施行規則第7条第1項)。原因が離職のときは、離職証明書(離職票のもとになる書類で、受給資格や給付金額、給付日数を決める基礎になるもの)などを添えます。
厚生労働省『雇用保険事務手続きの手引き【第2編】』(令和8年8月版)によると、本人が離職票(失業給付の手続きに使う書類)の交付を希望しないときは、離職証明書を添えずに資格喪失届だけで出せます。ただし、離職の日に59歳以上の人は、希望の有無にかかわらず離職票が必要です(同規則第7条第3項)。離職証明書を出さなかった場合も、後日本人から離職証明書の交付を求められたら、これに応じる必要があります。
手引きは、届出が遅れると離職票の交付が遅れ、本人が雇用保険を受けるうえで極めて不利益な状況になるとして、期限内の届出を求めています。離職証明書の離職理由は、退職する日までに本人に見せて確認を取るよう案内されています。
健康保険・厚生年金保険(社会保険):5日以内
健康保険法施行規則第29条と厚生年金保険法施行規則第22条は、資格喪失の届出を、当該事実があった日から5日以内に行うと定めています。日本年金機構の案内では、提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所で、方法は電子申請・郵送・窓口持参です。健康保険法施行規則第29条では、健康保険の届出先は「日本年金機構又は健康保険組合」とされています。
日本年金機構によると、退職による資格喪失日は退職日の翌日で、たとえば3月31日付けで退職した場合は4月1日です。
全国健康保険協会(協会けんぽ)の被保険者は、届書に、交付されている資格確認書などを添えます。紛失などで回収できないときは「資格確認書回収不能届」を添付します。また、協会けんぽの健康保険と厚生年金保険を同時に喪失する場合、厚生年金保険の届出は健康保険の届書に併記して行います(厚生年金保険法施行規則第22条第3項)。
本人に渡す書類:退職証明書と源泉徴収票
退職した労働者から証明書の請求があったときは、使用者は遅滞なく交付しなければなりません(労働基準法第22条第1項)。証明書の対象になる事項は次のとおりです。
- 使用期間
- 業務の種類
- その事業における地位
- 賃金
- 退職の事由(解雇の場合は理由を含む)
退職証明書は、会社から自動的に出す書類ではなく、請求が出発点です。ハローワークが交付する離職票とは別の書類です。同条第3項により、労働者が請求していない事項は記入できません。
源泉徴収票は、給与等を支払う者が2通作成します(所得税法第226条第1項)。年の中途で退職した人については、退職の日以後1か月以内に、1通を税務署長に提出し、もう1通を本人に交付します。税務署に提出する範囲は、財務省令で定められています(この記事は2026年11月時点の内容です)。本人の承諾を得て電磁的方法で提供することもできますが、本人の請求があるときは源泉徴収票そのものを交付します(同条第4項)。
担当者が確認しておくこと
退職が決まったら、退職日、資格喪失日(退職日の翌日)、離職票を希望するか、退職証明書の請求があるかを早めに確認しておくと、期限に間に合わせやすくなります。

