しゃろ勉ニュース › 採用
採用

「人手不足」の中身:どの業種で、何が足りないのか

「人手不足」と一口に言っても、足りない業種も、正社員かパートかも、調査によって見え方が違います。この記事では、厚生労働省と帝国データバンクの2つの調査で、何がどれくらい足りないとされているのかを整理します。

公的調査:厚労省「労働経済動向調査」

厚生労働省の労働経済動向調査(令和8年8月)は、2026年8月1日現在の状況を、主要産業の規模30人以上の民営事業所に尋ねたものです。5,786事業所に調査し、3,175事業所から有効な回答を得ています(2026年9月29日公表)。

指標は「労働者過不足判断D.I.」です。「不足」と答えた事業所の割合から「過剰」と答えた割合を引いた値で、プラスなら人手不足と感じている事業所が多いことを示します。

  • 正社員等労働者(調査産業計):+47ポイント(5月1日現在も+47)
  • パートタイム労働者(調査産業計):+26ポイント(5月1日現在は+27)

産業別では、正社員等は「運輸業,郵便業」が+61、「建設業」と「学術研究,専門・技術サービス業」が+59、「医療,福祉」が+55でした。パートタイム労働者では「サービス業(他に分類されないもの)」が+42、「宿泊業,飲食サービス業」が+34、「卸売業,小売業」と「生活関連サービス業,娯楽業」が+32です。

民間調査:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」

帝国データバンクの人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月)は、2026年7月17日から31日にインターネットで行われ、2026年8月17日に発表されました。全国2万2,350社に調査し、1万518社が回答しています(回答率47.1%)。

こちらの指標は、人手不足を感じている企業の割合です。

  • 正社員:51.3%(前年同月は50.8%)。7月としては4年連続で半数を超えた
  • 非正社員:28.8%(前年同月は28.7%)。7月としては3年連続で3割を下回った

業種別(母数が20社以上の業種が対象)で、正社員は「金融」67.1%、「建設」66.0%、「運輸・倉庫」65.6%の順に高く、6業種で6割を超えました。非正社員は「飲食店」が57.7%で最も高く、「メンテナンス・警備・検査」と「人材派遣・紹介」が56.8%で並んでいます。

数字を並べるときの注意

2つの調査は、同じ「人手不足」を測っていません。

  • 厚労省はD.I.(不足−過剰)、帝国データバンクは「感じている」企業の割合
  • 厚労省は規模30人以上の民営事業所が対象。帝国データバンクの業種別は、母数20社以上の業種が対象
  • 調査時点も違う(8月1日現在と7月中旬〜下旬)

このため、「+61」と「67.1%」の大小は比べられません。正社員では、建設と運輸がどちらの調査でも上位3つに入る一方、トップは厚労省が「運輸業,郵便業」、帝国データバンクが「金融」と違います。この違いも、調べ方の違いを踏まえて見る必要があります。

採用担当者がいまの数字から読み取れること(筆者の見方)

  • 「正社員」と「パート・非正社員」は分けて見たほうがよさそうです。 2つの調査とも、正社員の不足は調査全体で高い水準にあります。パートや非正社員は、厚労省の「宿泊業,飲食サービス業」、帝国データバンクの「飲食店」「メンテナンス・警備・検査」など、業種によって差が大きく見えます
  • パートの全体の数字は、ほぼ横ばいです。 厚労省のD.I.は5月1日現在の+27から+26へ、帝国データバンクの非正社員は前年同月の28.7%から28.8%でした。業種別では、帝国データバンクの飲食店が前年同月から4.1ポイント下がった一方、メンテナンス・警備・検査は前年を上回っています。全体の傾向が自社の職種に当てはまるとは限りません
  • 職種で見ると、さらに差が出ます。 厚労省の一般職業紹介状況(令和8年8月分)では、有効求人倍率(求職者1人あたりの求人の数)は職業計で1.06倍です。職業別では建設躯体工事従事者が8.25倍、保安職業従事者が6.99倍、介護サービス職業従事者が3.89倍、一般事務従事者が0.29倍でした(常用・パートを含む)。同じ会社の中でも、職種によって採用の難しさは違いそうです
  • 多くの事業所が、すでに動いています。 厚労省の労働経済動向調査(令和8年8月)によると、不足している部門に何らかの対応をした事業所は67%で、その内容は「中途採用の開始・拡大・強化」が66%、「新規学卒者の採用の開始・拡大・強化」が49%、「業務の効率化の推進」が42%でした(令和8年4〜6月期実績、複数回答)

自社の業種と職種が、どの数字に近いのか。まずそこから確かめるのが、手がかりになりそうです。

試験との関係

厚生労働省「労働経済動向調査」は公的な統計で、社労士試験の「労務管理その他の労働に関する一般常識」で学ぶ労働経済の資料の一つです。記事で並べた民間調査とは、調べている主体も、対象や時点も違うので、どの機関の、どの調査の数字かを分けて読むようにしておくと、数字の出どころを取り違えにくくなります。

厚生労働省「労働経済動向調査(令和8年8月)」 ↗
← 記事の一覧へ