
採用面接で悪気なく聞きがちな質問 公正な採用選考の基本
「家族は何をされていますか」「尊敬する人は誰ですか」。面接の雑談のつもりで聞いたこの質問が、実は採用選考で配慮すべき事項に当たることがあります。この記事では、なぜ配慮が必要なのか、代わりに何を聞けばよいのかを、厚生労働省の「公正な採用選考の基本」にそって整理します。
採用選考の基本は2つ
厚生労働省『公正な採用選考の基本』は、採用選考の基本的な考え方を次の2つとしています。
- 応募者の基本的人権を尊重すること
- 応募者の適性・能力に基づいた基準により行うこと
つまり、見るのは「その仕事をする力があるか」です。生まれや育ち、考え方そのものは、選考の物差しにしないということです。
なぜ配慮が必要なのか
同じページには、職業安定法第5条の5と平成11年告示第141号により、社会的差別の原因となるおそれのある個人情報などの収集は原則として認められない、とあります。
同じページでは、こうした事項を把握することは就職差別につながるおそれがある、としています。悪気のない雑談でも、応募者の適性・能力とは関係のない情報を聞くことになる点は変わりません。
配慮すべき事項
同ページは、配慮すべき事項を大きく3つに分けています。まず、本人に責任のない事項の把握です。
- 本籍・出生地に関すること
- 家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)
- 住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近隣の施設など)
- 生活環境・家庭環境などに関すること
次に、本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)の把握です。
- 宗教、支持政党に関すること
- 人生観、生活信条などに関すること
- 尊敬する人物に関すること
- 思想に関すること
- 労働組合(加入状況や活動歴など)、学生運動などの社会運動に関すること
- 購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
最後に、採用選考の方法です。次のようなものが挙げられています。
- 身元調査などの実施
- 本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用
- 合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
冒頭の「家族の仕事」は家族に関すること、「尊敬する人物」は思想・信条にかかわることに、そのまま入っています。雑談になりやすい話題ほど、リストに載っていると考えておくと安心です。
代わりにどう聞くか
考え方はシンプルで、その仕事に必要な適性・能力に関することだけを聞くことです。同ページが示しているのは配慮すべき事項で、言い換えの文例ではありません。以下はあくまで一般的な例です。
- 家族の仕事を聞きたくなったら、聞かずに、応募者本人の職務経験やスキルを聞く
- 愛読書や尊敬する人を聞きたくなったら、聞かずに、これまでの仕事で取り組んだことや身につけたスキルを聞く
質問を思いついたら、「この答えは、仕事をする力を判断するのに必要か」と自分に問いかけてみてください。必要でなければ、聞かないのが原則です。
中小企業の面接官が準備しておくこと
面接官が複数いる会社でも、1人で面接する会社でも、次の準備ができます。
- 面接で聞く項目や評価の基準を、事前に決めておく(同ページも、あらかじめ質問項目や評価基準を決めておくことを勧めています)
- 応募書類に、適性・能力に関係ない欄がないか見直す
- 健康診断を選考で行う場合は、合理的・客観的な必要性があるか確かめる
くわしくは、下のリンクから厚生労働省のページを確認できます。
職業安定法は、社労士試験では「労務管理その他の労働に関する一般常識」の範囲です。この記事で取り上げた求職者の個人情報の取扱い(第5条の5)は、労働者の募集や職業紹介の決まりと一緒に整理しておくと、条文の位置づけがつかみやすくなります。

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